ドンタコス通信
ドンタコス通信


全国20名足らずのドンタコス通信ファンのみなさま、お待たせしました。
ドンタコス通信の時間です。
今回はN村の人には言えない恥ずかしい事件がネタになっています。
では、どうぞ。


階段
N村はアパートの2階に住んでおり、会社から帰ってくると当然のことなが
ら、階段を上がる必要がある。
この階段の途中にゴキブリが2匹いる。しかも、なぜか毎日いるのだ。2匹
とも成虫にはなっておらず、羽の小さな茶色いやつである。
しかし、最近この2匹をめっきり見かけなくなってしまった。いなくなった
という事は
1.旅に出た。
2.アパートの他の住人に見つかり惨殺された。
3.アパートのどこかの部屋で安住。
4.近所の猫のオモチャになった。
といった推測が立てられる。
N村の部屋で遊んでいないことを願うばかりである。


カギ1 事始め
守Yさん、どうもお待たせしました。これが事の真相です。
5月19日水曜日、N村は残業したせいで自宅に着いたのは夜中の12時を
少し過ぎたくらいだった。
ポストに差し込まれた夕刊を引き抜いて、カギを取り出そうとズボンのポケッ
トに手を入れた。しかし、そこにあるはずのカギが消えていた。
うぉ、こいつはN村を落とし入れようとする某組織の陰謀か、などと小話の
ネタが一瞬だけ頭に浮かんだが、それどころじゃないと考え直して、カギを
探すことにした。
探す前から無いことは分かっていたのだが、分かりたくないという思い、そ
して万が一という思いで全てのポケットの中と、カバンの中を探ってみた。
探しながら、衝動的に包丁で人を刺した人の、現実を認めたくないという葛
藤はこんな感じだろうかなどと思ってしまう。
それはさておき、結果は予想通りであった。
さて、まずは現状を正しく把握しよう。
玄関以外の侵入経路は、ベランダ側の窓であるが、出勤する前にカギをかけ
た記憶がバッチリある。試してみてもいいが、まず無理であろう。
台所にも窓があり、そこはカギが開いている可能性が高いのだが、手がかり
になるものが何もないような垂直な壁なので、これも諦めよう。
一階に家主さんの家族が住んでおり、カギを持っている可能性はかなり高い
のだが、夜中で部屋の電気も消えているので、パス。
どうやら、家に入るのは無理のようなので別の方法を模索してみる。
安いビジネスホテルにでも泊まる。それだと、いまいち面白みに欠けるな。
知り合いの家に緊急避難する。一番近くにはT村さんが住んでいるはずなの
だが、住所・電話番号ともに分からないので諦める。
次いで、やや遠いが、起きていれば来てくれそうなのがI野。ブツブツ文句
を言うだろうが、厄介になることはできる。
後は、ひたすらに外で起きるという道も残されている。
I野にお世話になってもいいが、N村はこういう場合に人を頼るのが嫌いな
性格だったりするのだ。
それに、カギを無くして外で一晩中起きているなんてことは、滅多にできな
い体験のはずだ。
しかし、ちょっと待てよ、夜中に一人で意味も無く朝が来るまで待ちつづけ
るのがどんなに大変なことか分かっているのか。もう駄目だと思っても、ど
うしようもないんだぞ。自分で自分に問いかけてみて、朝まで起きるという
自信が揺らぎ始めた。
うーむ、どうしたもんか、頭の中はNOVAの考える人のようで思考が行き
つ戻りつしていた。
よし、決めたI野に電話しよう。そう決めて、近くの公衆電話まで歩いていっ
た。
歩きながら、頭の中でさんざんバカにされるシミュレーションをして、少し
でも電話した時のショックを和らげようとしていた。しかーし、なんと一番
近くの公衆電話は使用中であった。
この使用中がN村の考えを変えてしまった。N村は、さっさとI野に電話す
るのをやめて、一晩中起きることを選んだのです。
N村は心機一転、計画を練り始めた。始発が動き出すのが5時過ぎだから、
それまで、どうにか持ちこたえて電車の中で寝よう。そうしたら2時間ぐら
いは寝れるはずだ。
朝刊がくるのは、2時から3時ぐらいの間なので、ある程度の時間になった
ら、朝刊を持って駅前のファミレスにでも入って時間を潰そう。おそらく、
ファミレスに居れるのは長くても2時間が限度、それ以上居たら、退屈と疲
労で眠ってしまうだろう。すると、3時ぐらいまで時間を潰せば、後はなん
とかなるはずだ。
現在時刻はあれこれ悩んでいる間に12時30分ぐらいになっている。残り
2時間30分、なんとかするぞ。
方向性が見えてきたので、安心したN村はあてもなく歩き始めた。


さあ、N村はいったいどうなるのか、気になる続きはこの後すぐ。


カギ2 さまよう
ぶらぶら、歩くのも面白くないので、1ヶ月ほど前に自転車で迷い込んだ緑
地公園のような場所を目指すことにした。方向はなんとなく分かるのだが、
具体的な場所がさっぱり分からないので、勘だけを頼りに歩いていった。
歩いていると、目的の緑地公園ではないのだが、周りを木々に囲まれた場所
に出てしまった。
街灯が道を照らそうと努力しているのだが、雨上がりのせいで霧が出ており、
光はぼやけてしまっている。光が霧を強調しているようで、まるで異界にで
も迷い込んだみたいである。
辺り一面、白いもやに包まれていて、街灯が黄色い光を放ちながらぼんやり
と空中に浮かんでいる。そして、白いもやの中からこちらを覗き込むように
木々がじっと立っている。
無茶苦茶、幻想的で綺麗なのだが、ホラー映画のような不気味さもあり、だ
んだんと居てはいけないような気持ちになってきた。映画なんかとは比べよ
うもない、五感を通して感じる畏怖がN村の中でちらちらと芽生え始めてき
た。
こりゃマジでここに居たら何か出てもおかしくないぞ。
頭の中では、深夜の森の中で地面から生えてきた青白い手に自分の足首を掴
まれるという、怪談話の映像が流れ出した。
このまま居るとN村のやばい方向の思考のにおいを嗅ぎつけた、本物のやば
い者が出てこないとも限らんので、足早に退散することにした。
このままでは緑地公園に行っても結局同じようなもんだな、と思って別の目
的地を探すことにした。
思いついたのが、相模原公園である。結構でかい公園でミニ動物園なんかが
ある。道に迷いながら歩いたせいもあり、時間は既に1時30分ぐらいになっ
ている。相模原公園までゆっくり行けば1時間はかかるし、そこから家まで
は30分以上はかかる。そうしたら、予定の3時に家に着ける。N村は予定
を変更して歩き始めた。
途中にあった24時間やっているコインランドリ−があったので、思わずイ
スに座りたくなる衝動に駆られましたが洗濯している客が一人いたので諦め
て歩くことにしました。
予定通りに歩くこと1時間、ようやく相模原公園に辿り着きました。公園だ
けあってベンチはたくさんあるのですが、雨あがりなので、どれもこれも濡
れているので座れたものではありません。
それでも、座りたくて公園中を歩き回りますが、やっぱり乾いたベンチはあ
りませんでした。仕方ないので被害の少ないベンチを選んで、新聞を敷いて
その上にさらにハンカチを乗せてから座ることにしました。
座って落ち着くと、俺はいったいこんなところで何をやっているんだろう、
と思ってだんだん情けなくなってきました。それと同時に、屋根のある部屋
で眠れる毎日がどれだけありがたいものか、痛感しました。
電波少年の企画にある海外サバイバルのよう生活をやってみたいと思った事
もありますが、考え方が変わりました。やってやれないことはなさそうです
が、面白半分にはできそうにありません。
15分ぐらい休憩して、カギの開かない家に向かって出発しました。


ここまでは、どうにか予定通りに進んだN村。果たして無事に朝まで、起き
ていられるのだろうか、全然緊迫感のない最終回「カギ3 寝る」を待て。


カギ3 寝る
家まで、残り5分をきったぐらいのところから、安心したせいもあるのか急
激に睡魔が襲ってきました。それまでも、何度が睡魔が襲ってきても退散し
ていたのですが、今度のはかなり、きてます。
歩いているのか、眠っているのか自分でも区別がつきません。気がつくと、
ブロック塀に向かって歩いていたりするのですが、頭に血が巡っておらずス
ローな世界がN村を包んでいます。
ああ、このままじゃぶつかるな。さて、どうやったらよけれるんだろう。そ
うか身体の向きを変えればいいんだな。はて、向きを変えるにはどうしたら
いいのかな。
などと考えている間にもどんどんブロック塀は目前にせまってきています。
しかし、ここでN村の思考から分離して歩いていたN村の身体が、ちょっと
バランスを崩して、ブロック塀とは逆の方向へとヨロヨロと流されていきま
した。
最後はほとんど記憶がないまま、家の前まで帰ってきました。
歩きながら一眠りしたせいか、ちょっと頭はすっきりしています。時間は3
時30分。始発まで1時間30分ちょっとである。
ポストから朝刊を抜き取るとファミレスへと向かいました。
ファミレスには3組ほど先客がいました。みんなこんな時間にいったい何を
やってんだかと、思いましたが、そう言う自分の行動こそが普通ではないの
で気にしない事にします。
ご飯ものを食べてしまうと、あっという間に睡魔にあっちの世界にさらわれ
かねないので、サラダとアイスコーヒーを注文しました。
注文した物が来るまでの間、新聞を読むことにしました。
はっきりしない頭で新聞に目を通しながら5分ぐらい過ぎたでしょうか、気
付くと身体が左へ30度ほど傾いて、ハッと目が覚めました。
うーむ、いかんいかんと思いながら必死に新聞を読もうとしましたが、全然
頭には入りません。ほとんど新聞を読んでいるフリをしていました。
ほどなくして、アイスコーヒーとサラダが到着しました。
口を動かす咀嚼運動をしていれば、目が覚めやすいので有りがたくサラダを
食べました。
そして、ほとんど眠ったまま、どうにか5時ぐらいまで粘りました。
おそらく、店員は私が寝ていたのに気付いていたと思います。それでも、何
も言わずにアイスコーヒーが無くなったら、おかわりを持ってきてくれた店
員が仏様のように見えました。
ファミレスを後にして駅で時刻表を見ると始発は5時17分でした。
ホームにはサラリーマン風の人も結構います。おそらく毎日この時間に家を
出ているのでしょう、ご苦労様です。
予定通りに電車はやってきました。ひょっとしたら座れないかもという不安
がありましたが、そんな不安は全然無用で電車はガラガラでした。
電車に乗ると早速座って眠りにつきました。そのまま、延々1時間ほど終点
の新宿まで眠り続けました。
新宿に着いてもまだまだ時間があるので、そのまま、折り返して返ってきま
した。町田まで折り返すと、結構いい時間だったので、今度こそは会社へ向
かいました。
その日、私が話しをした守Yさんを除いては、誰もN村がそんな奇行をした
後だと気付く者はいませんでした。


今日のドンタコス通信はこれで終了。
カギ事件のネタは、あまりに長いので読み直してから修正という、いつもの
手順を踏んでいないので、意味の通らないところがあるかもしれません。
では、また次回をお楽しみに。


ドンタコス通信990523号
ドンタコス通信990604号
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