特別投稿 GPS No.8

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投稿者/G.P.S.     No.8     2007/05/16

ホヤ(海鞘)の酢の物 … 新鮮

丈夫なお腹が自慢であった同僚ら十数人と、夏の旅行会の夕食で、新鮮で、磯の香りの豊かなホヤの酢の物と赤貝の刺身を食べて、ほぼ全員が食中毒になったことがある。
磯の香りを残すため、ホヤと赤貝の洗浄が不十分であったことが原因の腸炎ビブリオ菌下痢症と推定している。(ホヤ:東北地方太平洋沿岸で取れる海産物で、独特の香りが強い)

私は夜中から激しい下痢に襲われた。あまり度々トイレに行くので、同室の友人の睡眠の妨げになると思い、ロビーの長いすに横たわり、ロビーのトイレを使用していた。
明け方近くになると部屋の中が騒がしくなった、何人かが下痢を発症し、トイレの先陣争いを始めていた。

発症した者全員、下痢は頻回で激しいが、嘔吐、激しい腹痛、発熱に苦しむ者はいないようである。
朝食の時間になり、広間に全員が集合したが、食事に箸をつける者は半数ぐらい。
私はお茶と梅干と味噌汁の汁だけを口にした。脱水に成りかけていたので塩味の効いた味噌汁がうまかった。
女将が出てきて、丁重に詫び、宿泊費、料理代は遠慮し、治療費を負担させて頂きたいと申し出、お土産を用意するのでお納め下さいと言った。そして今日は日曜日なので病院と医院が休診であるため,個人医に特別に往診してもらうしかないがどうするかと尋ねた。
下痢は酷いが、激しい腹痛、発熱などの悪性の症状のある者はいないので、医師の診察を受けずに、少し休んで、落ち着いたら帰宅すると回答した。女将はほっとしたようで、下痢止めの薬を求めて来ると言って急いで出掛けた。暫らくすると女将が戻り、下痢止めの薬が配られた。
集団食中毒が表ざたになると、旅館は営業停止処分を受けるであろう。我々も新聞記事に書き立てられたくはなかった。

皆より遅れて朝食後から発症した丈夫なお腹が自慢の彼は、下痢止め薬を飲んだが、すぐには効かないので、規定の倍量を追加して飲んだ。昼前には下痢が止まり、他のものが下痢で苦しんでいるにも拘らず、丈夫なお腹を自慢した。いささか憎らしかった。

早めの昼食として、ゆるいおかゆに梅干、干物などが出された。朝食を抜いた者の多くはおかゆをうまそうに食べた。私はおかゆの上澄み(重湯)に梅干を入れて飲んだ。塩味と酸味が利いて意外に美味しかった。

昼食後暫らく休んで、みやげ物を受取り、女将に見送られながら、帰路に着いた。
帰宅のため乗ったローカル線のディゼル車にはトイレがなかった。停車するたびに我慢できなくなった者が次々と途中下車した。目的地に無事到着したのはホヤの臭いが嫌いで箸をつけなかった者と下痢止めの薬を3倍飲んだ彼と下痢の我慢に慣れている私だけであった。
ローカル線は一時間に一本位の運行なので、途中下車すると一時間待たねばならない。私は一時間もローカル線の駅舎で待たされ、乗車し暫らくしたら再び途中下車となったら、2時間も遅れてしまう、駅から歩いて帰宅できるから、最悪の時には、下着とズボンを少しぐらい濡らしてもかまわないと腹を決め、辛くとも途中下車しないと決心した。
目的地まで約2時間の最後の1時間近くは漏れ出ようとする液体との辛い闘いであった。なんとか液体を押さえ込むことができ、目的地の駅に着くやいなやトイレに駆け込んだ。

下痢止めを飲まなかった私は帰宅してからも頻繁に続く下痢に苦しめられたが、絶食し、就寝したら、夜中にも目覚めず、翌朝にはすっきり回復した。
翌日出社したら、下痢止めの薬を3倍飲んだ彼が昨夜から高熱と激しい腹痛と痙攣を起こして、緊急入院したと連絡があった。多量の薬で無理に下痢を止めたため、食中毒を起こした菌が腸内で異常に増殖して、発熱と腹痛を起こしたのであろう。自慢の丈夫なお腹も大量に増殖した腸炎ビブリオ菌には勝てなかったようである。彼はこの事故以来、丈夫なお腹を自慢しなくなった。

翌日、規定量の下痢止め薬を服用した連中も全員が出勤してきた。しかしまだ下痢が続いている者が多かった。細菌性の下痢症に対して、市販の下痢止め薬は一時的な効果しか発揮できなく、症状を長引かせる副作用があった。

子供の時に食中毒で、下痢をすると、下痢止め薬を飲まされた。下痢は止まるか、頻度が少なくなるが、小腸で十分に消化されなかった内容物が大腸の内に滞留して、異常発酵を起こし、お腹が張り嘔吐する。この時には、発生したガスの圧力で腸の内容物まで吐くので、ものすごく苦しい思いをした。
嘔吐しない場合には、発生したガスの圧力で腸管が拡張して、お腹が破裂するのではないかと心配するくらい膨らみ、耐え難い腹痛に悩まされ、下痢止めの効力が低下すると、ガスと一緒にシャワーのような下痢を繰り返した。

この経験から、医師に下痢止め薬を処方されても、どうしても下痢を一時的に止めなければならない時以外は服用しなくなった。

下痢止め薬(止瀉剤)には多くの種類のものがあるが、漢方薬を除けば、下記の3種が代表的なものである。
塩酸ロペラミド(商品名:ロペミン)は腸の運動を強力におさえ、腸管での水分の吸収を増やす止瀉剤で、医師の処方薬である。強力な止瀉作用があるので、緊急の場合に役立つが、食中毒の症状を悪化させ、長引かせる危険性が高い。
ロートエキス配合薬(商品名:ストッパ下痢止め)は腸をコントロールする神経に作用し、収縮を正常化し、下痢を止める。急に発症した下痢を止めるのに広く使われている。
この薬はお腹の冷え、消化不良などによる単純な下痢症、過敏性腸症候群などの腸管の異常運動による下痢症に対して有効であるが、食中毒での下痢に対しては一時的な効果しかなく、症状を長引かせる危険がある。
塩化ベルベリン(商品名:ワカマツ錠、フェロベリンなど)は止瀉作用が穏やかであるが、腸管内の病原菌に対する強い殺菌作用と腸管蠕動抑制作用および胆汁分泌促進作用が期待できる。軽い食中毒での下痢症に対して有効である。
私は細菌感染が原因の食中毒で、どうしても止瀉剤が必要な時にはこの系統の薬を使用している。

食中毒で下痢を発症した時には、出掛けるまで、または仕事を始めるまでに十分な時間があれば、水分と乳酸菌製剤を過剰なくらいに摂り、お腹の中の食中毒の原因物を積極的に速やかに排出することで、腹痛、発熱を避けることができる。
このようにすると、一時的に下痢が激しくなるが、お腹の中がすっきりして、回復が早いことを経験から感じて実行している。私には下痢止め薬よりはるかに効果が確実である。
特に有効な薬のないウイルス性下痢症に対して効果がある。

食中毒の原因が細菌感染であると推定される時は、掛かり付け医師に診断してもらい、想定される病原菌に適合する抗生剤を服用する。しかし抗生剤は腸内の細菌のバランスを崩し、下痢症を長期化させることがしばしばある。この対策として、乳酸菌製剤を同時に多量に服用する。止瀉薬を同時に処方する医師もあるが、私は決してこれを服用しない。

食中毒の原因がウイルスの場合は有効な薬剤はない、乳酸菌製剤を多量に服用し、ORS(経口補水塩)かスポーツドリンクなどミネラルと糖分を含んだ水分を飲用して脱水症を防いで、自分で治すことにしている。脱水にならなければ、どんなに下痢が激しくとも、生命の危険はない。私は何回も経験している。
嘔吐が激しければ、経口で水分補給が出来ないので、医師による点滴が必要である。

下痢症の原因が細菌感染かウイルス感染かを正確に判断するには、細菌・ウイルスを培養して検査する必要があるため、時間が掛かる。検査結果が出るまでは医師でも判断が困難で、発症前に摂取した飲食物から推定せざるを得ない。

食中毒への警戒を怠ることなく、下痢を発症したら、その原因を自己判断し、適切に速やかに対処することが大切である。

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