投稿レポート565
投稿No.565  投稿者/街の人気者  2004/04/19

ツナ缶詰 … 16年もの+2年

あれは昭和51年のこと。部活動で合宿の食費を切り詰めたいと思っていた我々に、OBから缶詰の差し入れがありました。ズッシリと重い、いかにも業務用風なその缶詰、ラベルも文字もなく、銀色に何かの記号が印字してあるだけ。先輩によると、これは「ツナヌードル」という商品なのだそうです。
某食品会社が製作したもので、海外輸出用とのこと。2kg近い缶が2ダースほど入っており、これは助かる、と喜んだことはいうまでもありません。

開缶してみて分かったのですが、この「ツナヌードル」は片一方にツナが、もう一方にヌードルが入っている。で、酸っぱいというか、クセのある匂いなんです。そのまま食べようとしたけれど、誰も手をつけない。
「とにかくマズイ」との烙印を押されたツナヌードルでしたが、せっかく先輩がくれたものだし、食べないわけにはいかないのです。カレーに入れたらどうだろう、という提案を実行してみると、比較的まともで(部員の2/3は残しましたが)、でもそうそう食べたい味でもなく、結局困ったときにカレーにする非常食として、部室に3年間置きっぱなしでした。3年経っても缶が膨張するわけでもなく、ようやく食べ終わると同時に記憶から消えていったのです。飲み会なんかで合宿の思い出話するときは、必ず「マズイもの」の代名詞として出てきましたが。

さて、数年して就職した会社のグループに「あの」ツナヌードルを作った企業名がありました。入社してから5年ほど経ったころ、そこを訪問する機会があり、「学生のころはツナヌードルにお世話になりました」と言ってみたんですが...、誰も知らないんですよ、商品名。おかしい、そんなはずはない。

全てが明らかになったのは、しばらくして外食産業のプロジェクトで、その食品会社の研究開発主任と仕事をしたときでした。「昔、学生のころにツナヌードルを食べまして」と切り出したところ、「なに、君知っているの?ツナヌードル!!」との返事。ああ、やっとめぐり合えた、なつかしのツナヌードルを語れる人に。彼が続けるには「あのツナヌードルはね、僕が試作したんですよ」「南アフリカに輸出しようとサンプル送ったんですけど、返品されちゃってね」「当時としては珍しいローズマリーを香辛料で入れたんですけどクセが強くて」

そうか、あの独特の味わいはローズマリーだったのか。ん?当時はって?
「ところでキミ、合宿で食べたっていつのことですか」
「ええっと昭和51年にOBからいただきまして、3年ほどかけて食べたんですけど」
「なんとっ。アレ試作したのね、昭和35年なんですよ。よく生きていたねえ。うん、ボクの作り方はまちがっていなかったわけだ」
というわけで、我々は16年モノから18年モノという缶詰に青春の1ページをささげてしまったのでした。
ああ、生きててよかった。ツナヌードルはまずい。

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