投稿レポート1643
投稿No.1643  投稿者/千本松  2012/03/18

灯台元暗し

「あぁぁぁぁぁ・・・・」









目が覚めるとこんな感じだった





なんだろうね


あの頭に血がいってないような感覚にフワフワ浮きそうな不思議な浮遊感






俺は先輩の部屋のど真ん中で地獄の淵にいた







振り返る事先日






先輩は27歳



俺は22歳だが音楽の専門中にミクシだかで知り合ったボーカルの友達と言う少し複雑な間柄だ






無論男だ






そのボーカルがメイド喫茶に行くと言う話をしていたらそのボーカルが友達連れてっていい? みたいな流れになって知り合う事になった




したら恐ろしい程良くしてくれる先輩だったためボーカルより仲が良くなってしまい 実家暮らしの先輩の家が広いので入り浸るようになった





その時は秋だったな


少し暑い位で扇風機回してたの覚えてる




その時





「腹減りましたな」





「そうだね いい加減ファミマも飽きたしどっか行く?」





「うーん あんま今日は金使いたくないんすよねぇ」





「まことー」






「ん?まことさん、母上呼んでますよ」






「なに?」






すると母上が今からうどん煮るから食うか?って話だったらしい






これはこれは まさに釈迦の助けではないか





家庭の味なんて久しく食っていない





「いただきやす」





「あっ なんか食わせるから自分らで好きなように作れだってさ」






「おっつ まさかの家庭の味がエスケープ 母上にご馳走するパターンか」





「とりあえず冷蔵庫見よか」





ガチャ





「えーと 見事に食材と呼べる物が無いっすね」





「ポン酢とソースとチリソースと牛乳と梅干しと柚子胡椒だけだね」






「下の野菜入れに野菜あっから見ろー」






と 隣の部屋から釈迦の声がした







ゴバァ






「おぉぉぉ って人参と卵しかないっすね」







「仕方ないね 人参を具にして卵を落とすだけのベーシックな物にしよう」








「そっすね まぁ人参うどんって響きは評価出来ませんがそうしましょう」







お湯を沸かす

人参を短冊に切り煮る

うどん入れる

ツユを入れる

卵入れる







卵は部屋に持ってきた時に入れたのだよ






ズルズル






「うん 安上がりなうどんに人参入れただけとはいえ腹が減ってれば立派な逸品すね」






「人参も意外と悪くないね」





ズルズルズ・・・・






「・・・・・・・・」







俺はおもむろに卵のパックに目を落とした






to day 11.09.xx




賞味期限 11.07.07








「・・・・・・・・」






「まこっさん」






「なに?」








「二ヶ月あったら何が出来ます?」








「入ったばかりだった部活が先輩とプライベートで遊べる位の関係が持てる期間だね」






「なるほど それはそれはタイムリーな表現すね」






「ん?どした?」






「こいつはその期間分悪くなってたみたいすよ」







「OH」






「いや、マジでフランキーに振る舞ってる場合じゃないすよ」






「あっ 大丈夫ー それパックおっきぃから中身変えてケースにしてるだけー」






と 釈迦の声






「えっ んじゃ中身は全然食える卵なんすかー?」






「大丈夫大丈夫ー 卵は一週間位じゃ腐らないからー」






と ようやく釈迦が魔族の類だと言うことに気付いた





「いや、でもうち結構期限切れ使っても皆大丈夫だから多分大丈夫だよ」





「それは佐藤家、またはまこっさんの胃が異常なだけじゃないすか・・・・?」






「俺は結構胃が弱いからそれはないよ」






「そっすか・・・・ まぁ味的にも変わりは無いから大丈夫すかね 気にしない事にしますわ」








そしてその日は梅酒を一本空け、気絶するように俺達は眠りについた








そして





今に至る






絶対そうだ


昨日の卵だ




なんとか歩ってトイレに行く





完全に水しか出ない





無色透明だ





女にでもなった気分だ






そして実家なので篭ってるわけにもいかず部屋に体を引きずり戻る





思えば朝の3時位に起きたのだから誰も入るわけがなかったから篭っててもよかったのだが






身体が寒い




着てきた上着やジャケット類を全部着込んで布団に潜る




今度は気持ちが悪い




俗に言う吐き気ってやつだな






またトイレへ向かう






嘔吐感に関しては吐かないより吐いた方がいいに決まっている




身体に有害だからこそ胃が拒絶反応を起こすのだ



出さない理由がない






ところが





いくら吐こうとしても胃液すら出ない





ならばこの嘔吐感はなんなのかね






不可思議






とりあえず逆に考えるといくら吐き気があろうと寝ゲロをかまさないという確信は得た




ならば問題は下痢野郎だけだ




そして辞書の衰弱という文字欄に挿絵として掲載されてもおかしくない程弱った俺は眠りについた





むしろ気絶した に近い





そしてまた腹の痛みで目が覚める




どのくらい時間経ったかはわからん





ただ全力でトイレに駆け込み水を放射





死ぬ これは本当に死ぬ






目も見えないレベルのふらつきと胃の内側からマチバリで刺されてるような想像を絶する痛み






俺はあらゆる可能性を考えた





人参に寄生虫が居た、卵の腐敗がシャレになってなかった、うどん時代が腐ってて消化出来ず胃の中で凝固している、そばツユが腐っていた





色々考えたが全て想像の中での話だから考えてもしかたなかった




その状態が二日続いた





部屋の通路のど真ん中で二日も飯も水も摂らず布団に包まり便所以外の時間は全て睡眠という状況でまことさんは気を使ってが一周回って俺をスルーしてた






そして二日振りに言葉を発した俺の一言は






「まこっさん・・・・」







「おっ、おぉぉ どうした?」







「救急車って呼ぶといくらかかるんすか・・・・?」







「んー・・・・わからん」







「そすか・・・・」






そして三日経ち、やっとギリギリ歩けるレベルにまで持ち直した俺はまことさんのチャリを借りて三日がかりで溜めた僅かな力で薬局に行き腹痛に効くほぼ全ての薬を買い揃え三日振りに水を飲み薬を入れた






そして調子に乗った俺はファミマでファミチキと杏仁豆腐を購入し佐藤家でむしゃぶりつき即リバース






もう耐えられない状態なので病院へ駆け込む






診断結果は卵の件を告げると そのせいで胃液を出す昨日が弱って身体が極度に衰弱して胃が物を受け付けず栄養もとれないという無限ループになっているとの事




ただこのレベルの激痛は悪くなった卵位じゃ有り得ないとの事






そしてかなり強力な薬を貰い佐藤家で飲み、また死んだように眠る






そして翌日






相変わらず食欲等は無かったが腹痛と吐き気はかなりマシになった





医者って偉大






そして夕方位になると多少の食欲も戻り快気祝いに道頓堀に行ってシーフードミックスを即座にもんじゃリバース





そして二日程してようやく全快






しかし不思議だ



卵とは言わずも全く同じ材料で同じ物を食ったまことさんが無事で俺が悪魔のウィルスに感染した理由がわからない






そしてその日我が家に一週間ぶりに帰る






腹が減ってたので冷蔵庫を開けた






おっ そいや茶碗蒸しがあったな







そこで




全ての真相がわかった








まことさんの家に行く寸前にもこの茶碗蒸し食ったのを思い出した






賞味期限 11.04.26






恐ろしい表示にが目に入ってきた






夜目が覚めて口の中が嫌な感じになってて味の濃い物で口の中をリセットしたくて半寝ぼけ状態で冷蔵庫を模索した結果奥にあった茶碗蒸しをレンジでチンして食ったのだった





ほぼ真空状態の形状だから茶碗蒸しの賞味期限は長いとでも思っていたのだろう





というよりランダムに食材を買う俺はいつ買ったかすら考えなかったのだろう






約半年間の眠りから覚めた茶碗蒸し





考えただけで悍ましい






半年間




そんな時間があれば何が出来るだろうね

おぇ〜ランキングに投票!
投票数
※当サイトの注意点※ 決して真似しないで下さい。また、参考にもしないで下さい。このサイトを読んでも役に立つことはありません。暇つぶしにどうぞ。