あれは私が高校生だったある日のこと。……いや今も高校生だ、すまん嘘ついた。なんか格好良く文を始めてみたかったんだ。約束しよう、これからは真実のみ話す。
まあ聞け、これは昨日のこと。
私は思っていた。
『何か危険なものは無いか」
平和すぎる日常の中で、退屈ゆえの思考である。
そうしてそんな時に私の隣で言ったのは友人のS氏。
「あははこれマジ表紙詐欺じゃん」
何だそれは新手の詐欺か?
私は彼女が手にした物体を見た。
『驚異の人体実験、食中毒への道」
これは。
私の夢を実現させるのにぴったりではないか!
私はこの運命の出会いに感動し、図書室から借りたという友人S氏からまた借りし、嬉々としてバスに乗り込んだ。すばらしく気分が高揚していた。こんな書物は生まれてはじめてみた。まさに私の求めていた新鮮さがそこにはあった。
もっとも、その書物の中身は新鮮からは程遠い、虫やらカビやらが充満していたが、私をうならせるには十分だ。私はバスの中でそれ(世界一新鮮な書物、略してSSS、さらに略して3S)を楽しんだ。
途中、まるで発作か何かのように笑いが込みあげるのもしばしばで、バスの乗客からの白い視線が突き刺さり、さすが世界一新鮮な書物、略してSSS、さらに略して(以下略)だと感じた。
そうして、しばらく。
――――うう。
なんかきもてぃわるい。
あれか?危険な実験?これを読もうとしたのがそもそも、危険なのではないか?なんだこの危険な書物?もうお前なんか、世界一危険な書物、略してSKSに改名してしまえばいい。なんかきもてぃわるいし。くそ。
私はバスを降りた。
「うううきもてぃわるい」
きもてぃわるいのがすっとなくなった。
「ううう……?」
あれ……?
あれれ……?
え……?
なんか、ただのバス酔いだったようだ。
じゃあ危険なもの食してないぢゃん私!?
……ここまで読んでくれた皆様、まことに申し訳ない。
べつに私はなにも変なものは食っていなかった。
当然だが、あのあとも体に異変は無い。
それにしても、あんな本を置いておく高校の図書室って……。
いやまあおもしろかったけどさ。