投稿レポート1182
投稿No.1182  投稿者/トラウマ  2007/05/27

20年ばかり前のこと。奥さんがしばらく旅行にでていて一人だという知人宅で缶ビールを飲んでいました。
何かつまみはないかなあ、と冷蔵庫をあさっていた知人が、何か見つけたらしく、おもむろに干からびた物体を持ってきました。「たぶん鮑だろう。」というくらい原形をとどめていないそれは、乾燥し、硬くなっていました。その「貝類」らしき物体を、食べやすく包丁でスライスし、つまみにして食べました。当時まだ若かった私は、ちゃんとした鮑を見たことも食べたこともなく、めったに食べられない高級食材「鮑」という響きだけで、警戒心を失ってしまいました。
しばらくしてくしゃみがとまらなくなり、「風邪をひいたのかなあ」とおもって、知人宅を「体調が悪いので‥」と辞して帰宅し、22時頃だったか、すぐに床に就きました。
くしゃみは相変わらず止まらない。当然眠ることなどできず、そのうち滝のように鼻水が流れてきます。首を絞められるような息苦しさに襲われ、洗面所に立った自分の顔を見てびっくりしました。

鼻の高さまで膨れた頬。めは金魚のランチュウのように周りが腫れて目が落ち込んでいます。息苦しさの原因は首周りまで腫れ気管を圧迫していたからでした。
死の恐怖を強く感じましたが、あまりにも醜い顔に救急車を呼んだらご近所様に見られてしまう、と、それどころではない状況なのに妙に体裁を気にして、一晩うなりながら白々と夜が明けるまで一睡も出来ずにのた打ち回っていました。
翌日、開院と同時に駆け込んだ病院で「腐った貝類食べませんでしたか?」とドンピシャ聞かれ、立派な食中毒患者に認定されました。

あの恐怖は二度と味わいたくない。実際、死ぬほど苦しかったし。

あれ以来、20年間。歳をとって、食べる機会は何度かありましたが、新鮮だと分かっていても、いまだに鮑には手をつけていません。

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