ドンタコス通信
ドンタコス通信


気がついたら、先週は見事にサボってました、はっはっは。
自分でも予想外に3回に分かれてしまったインチキ闘病編・第2部の最終話で
す。果たしてオチは無事に決まるのか?いやいやそれ以前にオチは用意されて
いるのか?結果は読んでのお楽しみ。


前回までのあらすじ
面倒なので省略


やっべー、失敗しちまった。
これで、体験談みたいに高野さんが朝になっても起きてこないとか、病状が急
変して、亡くなったりしたらどうしよう。
N村のせいじゃないんだけど、N村が見殺しにしたようなもんじゃないか。N
村の行動があと数秒早かったら、悩んだりしなかったら、助かったのかもしれ
ん。
家族の方がやってきて、息子は昨日はどんな様子でしたか、訊かれでもしたら、
なんて答えりゃいいんだ。息子さんは、死神に魂を奪われちゃいました、なん
て言えるわけねぇぞ。
後悔しない道を選択したはずなのに、こうまで悔やまれるとは。
いっその事、眠って忘れてしまいたいが、寝れるわけがない。
いや待てよ、まだ高野さんが死んだと決まったわけじゃない。N村の分かって
いる事実は、夜中に誰かが病室の中を歩き回って高野さんに手をかざして、出
て行っただけだ。ただし、出て行く方法が普通じゃなかったけど。
な〜んて、落ち着いて考えたって、不安や罪悪感は全然消えやしねぇぞ。この
ままずっと、不安を抱えて黙って過ごすしかないのか。このイヤーな感じって
一生消えないんだろうか、現実逃避したくなってきた。

気がつくと、看護婦さんに揺すられて起こされたところだった。
いつの間にか眠っていたようだ。
昨夜のことを思い出して、隣のベッドを見たら、当の本人はとっくに起き上が
っている。
無事なことに拍子抜けしつつも、おはようと挨拶を交わした。
昨日のあれは気のせいとか夢じゃないよな、よく分からないけど一日様子を見
よう。
朝ご飯を食べて、のんびりと小説を読みつつ何事もなく、昼になり、高野さん
は、検査の為に呼ばれていった。
うーん、やっぱり昨夜のは何でもなかったのか、一時期の不安はだいぶ薄れて
きたものの、まだ不安な気持ちは残ったままだった。そして、不安が薄くなっ
た分だけ、昨日見たものは何だったのかという疑問が膨らんできた。
幸い病人として病院に入院しているだけあって、考える時間はたっぷりある。
しかし、時間は過ぎるばかりで何ら疑問は解決しないのであった。
そのうち、高野さんが検査から帰ってきた。何だか、嬉しそうに見える。別に
病状が悪化したわけじゃなさそうだけど、何で嬉しそうなんだ。看護婦から告
白でも受けたか?
「高野さん、何だか嬉しそうですね」
「実はですね、何だか知らないけど、胃の腫瘍が無くなったんですよ。先生も
頭をひねってましたけど。それで、明日もう一度再検査してから、問題なかっ
たら退院できるんです」
「えっ、何て言っていいのか、おめでとうでいいのかな」
「ありがとうN村さん」
「ちょっと家とか会社に電話してきますね」
そう言うと、高野さんは携帯電話を握り締めて、病室から出ていった。

うーん、全く予想外の展開だなこりゃ。あれこれ不安に思っていたのがバカみ
たいに思えてきた。
そういえば、昨日の人影は出て行く時に、胃のあたりをさすっていたけど、あ
れは満腹になったからじゃなくって、高野さんの胃にできた腫瘍を自分の胃に
移したからなのかもしれない。あれは幸福の王子みたいなもんであろうか。
まあ、世の中にはN村以外にも不思議な存在はいるって事だな。

翌日の夕方近くに、高野さんの母親がやってきて、簡単に別れの挨拶をすると
高野さんはあっさりと退院した。
その夜、N村は体験した事に多少脚色を加えて、深夜に読んでいた恐怖体験談
のサイトに投稿すべくメールで送付した。
これで、今日は心地良く眠れるぞと思って、メールを送ると本当にグッスリと
眠ってしまった。
翌朝、N村は何だか胃腸が痛むし、身体のあちこちが何やら悲鳴を上げている
のに気がついた。
うーん、何だこりゃストレスかいな、やっぱり俺って繊細な人間だから、環境
が変わると調子が悪いんだな。それに着地に失敗した影響が出てきたか。まあ
昨日は足が不調を訴える余地もなかったしな。でもなんで、右足とヒジ以外も
痛むんだろ、まぁいっか。
身体の体調は気にせずに、メールチェックすると投稿したサイトから早速返事
が返ってきていた。
「はじめまして、投稿ありがとうございます。管理人のニッキーです。
N村さんの投稿ですが、残念ながら似たような話が既にありますので、不採用
とさせて下さい。
気になったのですが、N村さんが入院しているのは、S市のK病院ですよね。
というのも、その病院はN村さんが体験されたような事が起きるらしいのです。
で、お伝えしにくいのですが、その人影を見た人の元には、数日後に、その人
影は再び現れて、治った人の病気を昨日人影を見た人に移すらしいのです。
どういう事か分かりますよね。
似た話というのは、N村さんと同じ体験をしたAさんの話を聞いた看護婦さん
からの投稿なのですが、同じ体験をしたAさんが数日後に複数の病気を併発し
て亡くなったというものなんです。そして、併発した病気とほぼ同じ数だけ、
同じ病気が突然完治した人がK病院にいたそうです。
その看護婦さん以外からも、似た話を2件いただいております。
それらの話が本当かどうかは分かりませんが、N村さんが無事であることを願
っています。」




というわけで、これで完結です。
当初は、N村が深夜の侵入者との接触を試みるという展開を想定していたので
すが、何度も書き直しているうちに、全く予想外の話になってしまいました。
そんじゃまた次回をヨロシクゥ!





ドンタコス通信060605号
ドンタコス通信060703号
ドンタコス通信に戻る。
N総研のTOPに戻る。